11.11.2012

誕生日の奇跡

好きだ好きだ好きだと言い続けた人が齢を取って
嫌い嫌い嫌いと呟いていた自分もいつの間にか齢を取った
何度も何度も何度も会いに行った人が知らない内に齢を取って
自分で言っていたからハッピーバースデーを歌ってやった
そうやって回っていく
地球
は年を齢っていくの?

齢を取るってなんだっけ


昨日までの僕

今日からの僕

の間に違いなんてないぜ


誕生日に感動的な出来事がある訳じゃない
世紀末の愛の告白も
宇宙人の到来も
神からの啓示も
ミスドの100円均一さえ

誕生日ってのはきっと怠惰な僕らが毎日「生まれて来てくれてありがとう」を言わなくて良いように1年に1回おめでとうを言う日なんだ

人為的な日に奇跡は起こらない
だから自分たちでパーティーを開くんだ
あなたの近くにいられなくてごめん
何事もなく過ぎていく日だった

11.10.2012

複数人へ

久し振りに

きもちよく飲んで
きもちよく酔っぱらって
きもちよく吐いた

早くおうちに帰りたくて仕方なくなって拾ったタクシーの運ちゃんはご機嫌で深夜料金は割り引いてもらった

介抱してくれる人がいないからあの人の手を思い出して
「あの人」は年を追うごとに増えていく
それが
良いことなのか悪いことなのかはさておいて

あなた、きっとまだ生きているでしょう
僕の知らない街で知らない人と泣いたり笑ったり愚痴を言ったり呑んだり吐いたりしながら
まだ生きてくれているでしょう
分からなければ何の助けにもならないことだけれど
知ったところでどうにかなるものでもないけれど
昔話では顔くらい覗かせてやっても良い
あなた「何様だ」って顔をしかめますか
それとも「そうだな」って微笑みますか
それもきっとあなたによって変わる
事実

僕は、僕が、僕の、
僕の、話を聞いて

そう言い続けて何年にもなるけど
あなたまだ生きているでしょう

脱ぎっぱなしの服からは 鞄からも
昨日のアロマと煙草のにおい
そうやって
煙草のにおいが嫌じゃなくなってから

しばらく経ちました

11.08.2012

夜明け前(未完)

今日の空は何色でしたか
僕は誰よりも早く空の綺麗さに気付ける人でありたいのです


毎日毎日
朝と追いかけっこしてた
いつだって追い越すのは僕
このままいったら朝の何倍も早く年を取っちゃう

夜明け前の空が好き
半分夜を残したまままどろみを写して混ざっていくあをが好き
夜明け前の空気が好き
昨日の嫌なことは全部清算して今日の責任はまだ受けない
気まぐれで何考えてるか分かんない君が好き

ねえ僕は
君がくれるのが言葉でなくてもぬくもりでなくても良かったよ

近頃は日が暮れるのが早くなった
朝の逃げ足も随分と早くなった

大量に束ねた紙が一枚一枚と舞っていって
地図 みたいだ
ねえいつだった
追い越すのは僕だよ

なんとかなりそうなことと
なんともなりそうにないことを天秤にかけて
とりあえず ぜんぶ
あとまわし

そうやって夜が明けた後はいつもいつも
一人切り
風が唸ってる
昨日の咎を昨日に流して
今日の咎を明日に流して
僕らまだ
夢の中
あなたの詩に追いつく
少しの幸せ
夜が明けたらぜんぶ現実
それまでは
全部


あなたのことは忘れない
でも

会いたいとは思わない

今日のかみさまとひとりきり

夕方になって暮れると
この街は風が出て雨が降る
夜が明けて
風が吹いて
かみさま
を連れ去った

はじまり

11.07.2012

新しい人

新しい人が来た
新しい人が来た

と思っていたけれど
もしかしたら知っている人なのかもしれない

人の顔も名前も覚えるのは苦手だ
相手が誰であったって会話はできる
子どもなら 特に

子どもの心を持った人だけが芸術の美しい部分を感じられるならば
1Kに住んでいたあの友人は子どもだったのだろうか
日常が制作に侵食されている彼女は
芸術家 には違いなかったけれど

新しい人が来た
新しい人が来た

と言っている内に季節は回って古い人になった

新しい人が来た
新しい人が来た

そう言って忘れられていった
大人 や 子ども

そう言って置いてきた
おとな や こども

は 今 どこにいますか

純粋な大人でも子供でもない
ぼくらは
新しい人 ですか
それとも
失敗した料理みたいに舌打ちひとつで捨てられる存在ですか
たしなみみっつで引き剥がされる子どもですか

前世での出会い や 約束 は
置いて来ました

11.06.2012

お月様とチーズ

チーズタルトを頬張る様にそっと
齧りたいものがある

ねえそのジャガイモちゃんと芽欠いてあるかい
ねえその食事ちゃんと毒抜いてあるかい

暴力的なスピードで新幹線は走っていく
人を跳ね飛ばすスピードで今日も特急は超満員

じっと部屋に籠っているだけじゃ僕ら何処へも行けない
それなのにじっと「位置している」だけで地球の自転が公転が太陽周期が僕等を何千kmと運んでいるらしい
人間には追い付けないスピードで地球が去っていく
嗚呼
だから時は流れていってしまうのか
決して追い付けないスピードで

夜明け前が好きな詩人がいて
「一緒に夜明けを見に行こうか」
って言ったら
「あなたとは無理よ」
と笑われた

家に籠ってても何だって手に入るぜ
食べ物も本も情報も友達も
僕等何千kmも気の遠くなるような旅をしてる
吹っ飛ぶようなスピードで同じ場所に戻って来る/戻れない

彼女の好きなフレーズを口ずさんでそれでもやっぱり「あなたとは無理よ」って言われた

貴女今頃誰とお茶してる
貴女今何考えてるの

地球の裏側の珈琲飲みながら海の向こうのお菓子食べながら考えている

お月様
お月様
ブルーチーズって馬鹿にされたんだってね

チーズタルトを頬張る様にそっと
齧りたいものがある

11.04.2012

嫌ですの美学

ガレットを焼く
そっと閉じる音がする
ガレットを焼く
そっと閉じる味がする

シャットアウト
シャットアウト
シャットアウト!!

僕は星を飼っている訳ではないのだけれどそれが流れていくものであることを知っているので特に何も言わないのです
のです

で済めば良かったのに

ねえ
ね、絵が見たいよ
君の
君の描く空が見たい
空、が恋しい

夏以外は窓を開けると寒いから嫌いです
身に覚えのないウイルス対策ソフトが警告文を発してくるので画面を開けるのは嫌いです
知らない人から迷惑メールが届くので携帯は嫌いです
君から掛かって来ないので電話は嫌いです
嫌いです
の、美学
なんて知らないのです

「物事の良い面をより多く感じて生きていたい、とか思っております」
誰かが言ってた
「僕」の中の何処かが言ってた
言ってた

「夢中になるものが欲しい」
数ヶ月前に会った時もそれ言ってたねって行きずりの人が言ってた
言ってた
のです
のですで済まないものなのです
そんなものなのです、いまってのは
まったくもって面倒くさいものなのです
のですで済まないものなのです
もう嫌なのです
いやですの美学なんて知らないけど

シャットアウト
シャットアウト
シャットアウト!!

ガレットは時計ウサギが持っていきました
行きました
のです

ささらい

こういうのを朝帰りって言うんだろうなあ多分違うけど
そんなことを思いながら
昨日居酒屋のカウンターで知り合ったばかりの人の自転車に揺られている
夜明け前
長かった一日をようやく終えて空き缶に終う
みたいな部屋から
これから始まる今日
へタイムトリップする
いま
夜明け前の肌寒い風が
昨日の酔いを昨日へと洗い流してくれれば良いのに
そんなことを考えながら
終わるはずのなかった色々なものが今へと続いていて
乗り損ねた電車を反対ホームから見送る
思いきり手を振ってやる
通勤用が起きるまでの電車を見送って地上にでれば魔法は解けて
ただただ
弱い僕がそこにいる
掴み損なった色んなものを
帰りたくなくてした大回りを
白日の下に晒して自分の眼だけ覆ってみる
君が目を合わせてくれないから君じゃない誰かを見なくて済むように
ずっと続く線路の上を走ってる
十七夜の月がにじみだしていて
終電を気にしていた昨日の人の言葉を思い出してる
「希望に満ちた朝」を暫く平行移動した後
夜明け
に背を向ける
「人生プラマイマイナスくらいがアタシには心地好いのよ」
と言っていた人の幸福な寝顔を想像してみる
AM6:05
また来る

まで乾杯
乾いた脳ミソが
輝かしい昼間へと祝杯を挙げる
とスケジュール帳に書き込んでいる
できってしまったこんにゃくゼリーみたいにぶよぶよしたかじりかけの


弛んだ体を星型に入れる
天窓から陽が差し込む家に
太陽熱給湯器がこしらえる朝食に

がまどろんでいる間に
僕は君との逃避行を決行する
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