6.30.2012

おとしもの


街を歩いていると夜が落ちていた
そんなに色とりどりにした積もりもないのに点々と
仕方がないので僕はそれを拾いながら
一方通行の大通りの脇の歩道を千鳥足
嗚呼知り合いが見たらなんと言うかしら

夜を落としてふらり
ふらり
昼を落としてひらり
ひらり
流れ星が哭いて
夢が墜ちた

ふぅわりひらり
宙を舞う
三階から飛んでったとりどりの紙が
風に挨拶してスカーフ揺らす

ふぅわり ひぃらり
よるのまち
夢を拾って飛んでった

僕は少年の画を買いそびれたから
通り過ぎるはずの喫茶店で3つばかし詩を書いた

何処かに落ちてやいないかしら
と、
それから僕は
お月様の欠片を探した


赤色が現れて隠れるまで


ぴりりと音がして
構わずぴりりぴりりとやっていると
皮膚から血が出ていた
熱湯の滝が顔をしかめるくらい沁みた

透明なお湯に浸かって
この前友人とtwitterで交わした会話を思い出してる
意味の無いことにも意味があると信じたい
例えば
今日買えなかったTシャツとか
今日した無駄遣いとか
そこのパニーニがすごく美味しかったこととか

足の指先が熱をもって
かかとがふやけて破れる頃
血は綺麗に止まっていた

6.26.2012

夢のよう


おもちゃみたいな本
おもちゃみたいなCD

おもちゃみたいなキッチン
おもちゃみたいなPC

何度やっても、僕は下手だから、今日も蜂蜜入りの豆乳には湯葉が浮いている

おもちゃみたいな部屋
おもちゃみたいな街

夢みたいな夕景

踊るようなダンスミュージック
(僕にはそぐわなかったね)
踊るように嘘をついて

夢みたいに鍋がカタコト音を立ててる

おもちゃのぬいぐるみ
おもちゃの旗

踊るようにダンスミュージック
歌って
(目覚ましが鳴ってる)

好きな詩人の本が届いて
噓みたいに今日が終わる



6.25.2012

月が出る

月が出たね
って君が言って
じゃあそろそろ帰ろうか
って僕が言った
今は真夜中だから6月には6月の星座
9月には9月の星座

月が出たね
って君が言ったから
星々は態をひそめて
ひっそりと息をする

半年経ってやっと買った月のカレンダーに君ははしゃいで
今日も月が出るよ
ってそう言った

6.24.2012

お茶と未来

お茶だけ淹れていこう
世界平和の、食糧の事なんて考えなくて良いから
遠い国のお茶を淹れてあげよう
南の国や北の国、どれが良い?

お茶だけ飲んで生きて行こう
夕飯の心配なんてしなくて良いから
そんでもって少しだけ未来の話をしよう

今日は豆乳でほうじ茶ラッテを作ってみたんだ
ちゃんと泡立て器も使って泡も乗せて
クラッカーも付けてあげる
熱いから気を付けてね
詰め替えたばかりの蜂蜜と買ったばかりのてん菜糖とどっち使う?
……ってほら、言わんこっちゃない

喫茶店の隅のいつもの席でさ、今日もお茶だけ飲んでいこう
好きなCDを掛けてもらって絵を眺めて
そんでもって君の好きな未来の話をしようか

6.19.2012

ばいばい さよなら またね 愛してる。

ばいばい

さよなら

またね

愛してる。





じゃあね。から始まる文章を僕は知っている
覚えてはいない

では。で終わる文章を僕は知っている
覚えてる





風が吹いてきたよさよならの風
朝陽が山から風を連れてきた

雨が降ってきたよ嵐の雨
何かが始まる予感をもってきた


じゃあ、またねを言おうか





旅人の君は旅をしている
村人の僕は村に住んでいる

そんなこと、誰が決めたの

猟師は山の中
漁師は海の中
旅人は森の中
村人も森の中
木洩れ日の中






じゃあね。から始まる文章を僕は知らない
覚えてない

では。で終わる文章を僕は知ってる
覚えてはいない




ばいばい

さよなら

またね

愛してる。


6.11.2012

アンダンテ

出発の前、
カーテンを閉めて鍵を掛けて部屋の電気を全部消した後
じんわり暗闇に眼が慣れていくのが好きだ
そこに光があるから

綺麗な音を聴くのが好きだ
綺麗な言葉を訊くのが好きだ
僕は美しい存在に成りたいのかも知れない
木々のざわめき
そしてそれはすべておなじ

だから
フォルティッシモかもしれないスタッカートみたいなピアニッシモで歌ってよ