2.28.2010

夜明け前のブルー

朝 僕は独り

もう一人が目覚める前に起きて屋上に上って

夜明け前の藍を見る

大切な一人の時間

鳥が鳴いて
風が吹いて
雲が動いて
僕はひとり

朝の匂いがする
明けきらない今日の音がする

此処から飛び降りたら解放されるかを考える
いつも

もう一人の方が先に行ってしまいそうで
僕はやはり一人なのだと思う

想う

2.17.2010

星を見に行こう。

夜の山に登る

頭上を風が吹いて行き、僕は風の海の中に居る

空の星を見れば 自分のちっぽけさをおもう





街の星を見れば
其の
暖かさと
冷たさと
遠さを
思う
想う
闇が世界を満たす
冷たい階段と金属の向こう
今も山の上では風が吹いている
感傷に溺れる
遠い光が
其の遠さが
暖かさが
一人を辛くする
闇が蠢いている沈む

2.09.2010

やわらかいつの

春の宵蔭の闇まで柔らかく

春の宵


そんな言葉がぴったりの夜だった
不意に僕は何か口ずさもうとし 直ぐに其の口を閉じた

暗誦できる唱を持つ教養など無かった



われもこう

その言葉が浮かんだ
初秋の花だった



吾亦紅さし出て花のつもりかな
小林一茶

2.08.2010

此の岸。

広がる原
中央を流れる広くて浅い川
所々深く地面を抉っている
音も無く太陽も無く影も無く金色の光が世界を満たしている
浅い夕方なのだろう   午後だった


中原中也の河原の様


小魚が、小さい銀の群れは足を浸けると散って行った
何を釣るのか竿と網とバケツを持った人もいる
互いに馴染みらしい人々
中年の人ばかり男性に女性に
主要なのは男性二人
みんな談笑している
僕は新参者だけれど其れが気にならない位暖かくて話しかけもしないのに
離れているのに

僕は必死に子供の気もちを取り戻そうと裸足になって地面を踏む
柔らかくなった足の裏が河原の小石に顔を顰める
玉砂利だろうこんなもの
見た目よりも僅かに痛く 其の痛みの軽ささえまだ慣れない
大昔はこんなもの気にもしなかったのに

歩き疲れて川の中に横たわる
濡れもせずせせらぎも無く水草が泳いでいる


『赤頭巾ちゃん』
臙脂の厚手のフードを被って居た僕に主催者が声を掛ける
思った通りの人だった
『僕らはもう行くけどどうする ご両親は』
『僕   だよ』
僕は名乗る
彼らには分かる筈
彼は知って居る筈
『嗚呼   か なんでもっと早く名乗らなかったの』
暖かい
新参者なのにそれすら暖かい
昔から此処に居た様に




いよいよ陰って来た
もう、帰らなくちゃ

2.06.2010

逃避願望

行きたい

此処では無い何処か

いつか

今では無い何時か

僕が生きられる世界



もう一人の自分がの世界を好きと言う
僕は連れてってと言う

待ってる


待ってるんだ
ずっと

そんな都合の良いこと無いと云う声を無視して
だって僕はの為に居るのだから
連れてってよ



何処か

ほぼ現実。

学校が休みなので人は少ない。にも関わらず図書館は開いている。普段にもまして静かだが暖房が効いているのと照明が明るいのとで午後3時の様な印象を受ける。
カウンターに1つだけある返却箱へ本を置く。受付の人には声を掛けなくても良かった。
図書の検索は専用のパソコンが各階に各階に置いてあり、貸出も専用の機械で出来た。僕は結局誰とも口をきかないまま目的を果たした。
土曜開館専用エレベーターのボタンを押す。扉は直ぐに開いた。
B1のボタンを押すと奥の壁に凭れて瞳を閉じる。


すぐだ

こんなせかいすぐおわる


浮遊間すら感じないまま僕は再び冷たい世界に吐き出された。