3.21.2011

I:夢に描いた南の島は

ここでは1年中雨が降っている

吹き止まない風が絶えずヤシの葉を揺らしロッジの中で眠る人々の髪を揺らし波を揺らし
竹壁に潮の波抹を吹き付ける


クイナの走る屋根には絶えずぱらぱらと花が零れ
在る筈のない滝音や打ち寄せない波の音やアルコールランプの明かりが
夜より明るい闇の中で何時だって雨を降らす


気付くと犬が横で丸まっていた
今日は雨か
起きたくないな


幻の雨に打たれて島人の代わりに
ウィリーギックスは腕を動かし続ける




※ウィリーギックス
クラフトの一種。木製の風車で羽根が回ると連結した人形の腕が動く細工がしてある。

II:無題

私は何時だってノートを持ち歩く

ノートの中に生まれたたくさんの僕が暗い沼での
僕の宿り木

けれど

この島に僕は必要ない

私は大事にしまい込んだノートを、
忘れてしまっている感情を

戻る日の為に取っている
誰にも触らせず見せず存在すら知られぬよう


まるで大切な物であるかの様に

III:ロッジA

ロッジA


貝殻を拾って字を書いて



僕は自分の存在意義にないた

IV:見つけた。僕の宝物

人はそれを見ても何も思わないけれど
私はそれらに意味付ける為に

今は

ラウイスの教会に行くより
其処で見ている子と遊ぶより

彼の詩集のページを繰る

V:そして其れを指輪にした

毎夜毎夜星降る木で1人でダブルダッチをしていたら
蒼く輝く水の中でキミは
スカシカシパンになっていた

VI:遥かな夢

実感がない


でも

全ては其処にあって
全ては其処にあって
私は此処にあって

僕は
海を渡る  風の神

VII:闇を切る白い船の先で思ったの

星が沢山見えたって黒闇の中に居たって僕は奏でるべき音楽も歌うべき唄ももっていない

IIX:銀河鉄道の旅

南十字星が見えて
北斗七星が見えて
波はひたひたと打ち寄せて
バー・帆先
此処は世界の中心



(水はなんて平らなんだろう)

IX:無題

水の上は平らだなんてそんなのは噓だ

地面の上に道があるように
人は
風にも海にも通る道を決めていて

道路に凹凸があるように
そこにも凸凹があって

それで僕らは喜んだり不満を言ったりする

X:其れだけで僕は君の虜

君はその幸福の島で
何時だって哀しそうな眼をしていた
次の朝帰ると云うに日になって昨日語り合った子に手紙を貰っても
心は何処かうわの空


嗚呼その心を摑めたなら
哀しい目が僕を見たなら


熱を持った日焼けの跡が
サキ・バーに行く前の存在を主張する

XI:其れは酷い痛みと共に

繰り返す   浅い眠り



繰り返す   カオハガンの夢



やがて    現実,失望



溢れ出す       涙






(その夜私は浄化の為に泣かなければいけない夢を見た。高熱に魘され理解不能な言葉を話して泣いていたらしい)