広がる原
中央を流れる広くて浅い川
所々深く地面を抉っている
音も無く太陽も無く影も無く金色の光が世界を満たしている
浅い夕方なのだろう 午後だった
中原中也の河原の様
小魚が、小さい銀の群れは足を浸けると散って行った
何を釣るのか竿と網とバケツを持った人もいる
互いに馴染みらしい人々
中年の人ばかり男性に女性に
主要なのは男性二人
みんな談笑している
僕は新参者だけれど其れが気にならない位暖かくて話しかけもしないのに
離れているのに
僕は必死に子供の気もちを取り戻そうと裸足になって地面を踏む
柔らかくなった足の裏が河原の小石に顔を顰める
玉砂利だろうこんなもの
見た目よりも僅かに痛く 其の痛みの軽ささえまだ慣れない
大昔はこんなもの気にもしなかったのに
歩き疲れて川の中に横たわる
濡れもせずせせらぎも無く水草が泳いでいる
『赤頭巾ちゃん』
臙脂の厚手のフードを被って居た僕に主催者が声を掛ける
思った通りの人だった
『僕らはもう行くけどどうする ご両親は』
『僕 だよ』
僕は名乗る
彼らには分かる筈
彼は知って居る筈
『嗚呼 か なんでもっと早く名乗らなかったの』
暖かい
新参者なのにそれすら暖かい
昔から此処に居た様に
いよいよ陰って来た
もう、帰らなくちゃ
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