10.10.2013

君の街についての考察を教えて欲しい



君の街についての考察を教えて欲しい


僕は湖に浮かぶ月になりたい
いつまでもそれを眺めていたい
誰かが掬っても通り抜けていたい
誰かに救い上げられるぬいぐるみでありたい
あなたに食べられるホットケーキでありたい
それは拙い妄想かもしれないけれど
君の街についての考察を教えて欲しい


叫びたかった何が何だか分からないまま
君の街についての考察を教えて欲しい


街はまだ晴れていた
街はまだ晴れていると言っても良かった
台風の前 渦巻く雲 飛び立った同僚
街はまだ晴れていた
君の街についての考察を教えて欲しい


人は歩いていた
街は流れていた
掃ったパン屑は鳥の餌
君の街についての考察を教えて欲しい


街はまだ動いていた
ビル向こうの電車もバイパスも
高層ビルの間の風切音も
中庭の葉擦れの音も
上空のヘリも
金属製のベンチに映る人の影も全部
混ざって街はまだ動いていた


君の街についての考察を教えて欲しい
どうしてこんな所にいるのか分からなくなるのだけれど
どこか行きたい場所がある訳でなく
どこか行ける場所がある訳でなく
(僕は自分の望む所まで来てしまった)
どこにいるかではなく誰といるかの方が重要なんだって気付いてた
人は変わっていくけど
場所も変わっていくけど
君の街についての考察を教えて欲しい


君の街についての考察を教えて欲しい
吹き抜ける風
赤くなったサルビア
街はまだ動いていた
僕という存在を呑込んで
君の街についての考察を教えて欲しい


9.18.2013

「詩人のよるつき」開催決定




2013年10月23日、ゲンヤ企画のイベントを開催します。
尽きることのない憧れ、choriさんに京都から来て頂きます。
詩のワンシーンが目撃できます。お時間合えば是非。

9.14.2013

すてきだった、夏のこと

君の愛した僕の生活 全部全部君にあげる
朝御飯に刻む葱の音
コトコト煮える小鍋の匂い
破くために書いた約束
はくためについた嘘


去ってしまう夏を君はおはじきのように転がして
ビー玉のようにぶつけた
青い玉はサイダーの味
赤い玉はさよならの匂い


あなたにはずっとやさしい嘘を吐いていて欲しかった
死ぬまで消えない嘘は本当になるはずだった
君にはずっと君であって欲しかった
いつまでも褪めない夢であって欲しかった
本当なんて要らない
現も実話も要らないんだよ


君の愛した僕の生活 全部全部君にあげる
夕暮れに想う帰り道
踏んで歩く影法師
口遊めないメロディー
忘れてしまった あの夏の素敵だったこと

6.30.2013

祈り

夕暮れから来た鬼 何処へ行く
コードが巻き付いてコードに縛られて黒鍵を跳び越せない
この閉塞感をどうしよう
この抜け道の無さをどうしよう


格好良いあの人は答えを知っているらしいよ
行く道を
僕は
この閉塞感をどうしよう
どうしてくれようか


夢も希望も明るいけれど輝いちゃいない
戦う敵は見えない
戦わなきゃ見えない光なら要らない
幸せな日々にこんにちは
それはぬるま湯さ


ハロー


好きな人好きな人お気に入りの人
つなぎの服と赤いギター メッシュ地の上着に長い髪
好きな声好きな声心地良い会話
ここから動かなければ此処が全て
目の前に一生懸命でもくたびれて死んでいけるさ


ハロー


一人の意識で変わってしまうような世界は認めない


変われるのは自分だけ?
笑わせんじゃない

変わる/変わらないに関わらず流れていく
変われる/変われないままに流れていく


そっと揺らしたのはコード
震えたヘッドホン
震え伝わる心まで
伝われよ


6月に流されていく五線譜 さようなら
台所の憂鬱 さようなら
じめじめとしめっぽい
バラード鳴らすレコードの針


赤青黄色で全てを変えて 塗り変えて
気を逸らさなければ見えない真実なんて信じない
ハロー 水底の世界
ギターが笑う

6.08.2013

もしや、雨。










君の素足が


白を踏みつけて砕けた


そんな六月の朝




4.21.2013

夜明け前まで


星空と山の出会う辺りに海を見に行こう
大気圏水色空色なんだか全部、涙の色なんだ


ブリリアントな魔法をずっと待っていた気がする、僕ら
僕らがじゃれあうようによりそった意義がわからない
まだわからないままでいる


日常に思い出が溢れて困る

君は赤い水を飲んでいた
それは泡立っていたかもしれない
センチメンタルなカントリー調の音楽を聴きながら
血になりきれないものが飲み込まれていく
僕はこんなだから、いつかの誰かの同じ名前の夜を消費している
僕らこんなだから、いつまでも手を繋いだまま向き合うことはない
いつかの誰かの夜がメランコリーを帯びて息を吹き返す
僕ら嘘吐きだから
僕はこんなだからさ

「君のことが好きだよ」
それはきっと全部、小さな爆発
目があったのはきっと気のせい
どこまでも優しい消え入りそうなドラムが夜を刻んでいる


色んなものを忘れたいと思ってる
誰かといる時の温かさとか優しさとか幸せとか
それらがみんななくなったときの切なさとか


静かな終わりを
綺麗な思い出を
それだけを望む訳でもないけれど
写真の中で僕らいつまでも笑っているので

コール アンド レスポンス

僕が好きな誰かも
君が好きな誰かも
素敵な日記を書いて最大多数の一部になった
僕ら夜に紛れる星になって街を行く


越えられる夜ならば越えて行こう
越えられなくなったら、そこでお仕舞い

平凡な叶うことのない夢を見てる
でも夢でも夢じゃなくても
僕は途方に暮れたまま佇んでいる


どこまでもどこまでも行ってしまいたいって思う朝
寝ぼけ眼で研ぎ澄まされた感覚
醜いものはもう見えない

東京の駅で出発を待っている
ブーゲンビリア
プルメリア
憧れは南の島 花の中

3.25.2013

D M

(ディー メジャー)





好きという気もちひとつ、飲み込んで
君の手を握る
ねぇ、寒いね

会いたい会いたい会いたい
と思っている
だけ
で伝わらない想い
それでも

君にあげるはずだった未来一つ探しています

いま
言葉を忘れ続けて
君と話したい
すごく

相変わらずマイペースだったあの子
を愛しいと思う
想いを
なぞる
よな

雪の降りそうな朝だった

冷え切って
それでも握り返してくる君の手が嬉しい
眠り込んでしまった僕を見守る君の眼が優しい

ねえ僕ら離れ離れになってしまうけど
どこへも行けず何も生み出さないのだとしても
今宵
君を夢見るくらいは許して欲しい

君の光を消さないようにそっと息をしている
昨日がそこで佇んだまま
眠り込んでいる明日を揺り起こしていいものか戸惑っている
もう少し眠らせておあげよ
きっと疲れているのさ
僕も君も

あの子に会いたいな すごく
あの子に会いたい気分だ
明日が起きれば会えるかな
珈琲を入れている間に朝日が上って
トースト焼いてる間に君に会いたい
昨日が額縁の中で色褪せていた
明日はすやすやと眠りこんだまま
今日がぼろぼろの指先を握りしめる
君に会いたいな
僕がもらう筈だった未来はどこで落としてしまったのでしょう

今朝見たのは君の夢
そっと掌を包み込むような
うんと素敵になって君を驚かせたい
君がずっと追い駆け続けるような
そんな人になるために僕はさ
ねえ

君の悲しむことなんてしたくないのに
君の負担になんてなりたくないのにな
水の匂いがする 水道水の臭いだ
雨の にほいだ
これが春を連れて来た

雨が降り出しそうな今日は朝からどんどん暗くなって
昨日よりも随分と暖かかった
「南からの湿った風が吹き込み、西から天気は崩れていくでしょう」
だ、そうだ
これだけ暖かかったら、もう君と手を繋ぐ必要も無い
僕は
それだけが悲しい

「目に見える程度の苦しみと
目に見えない程度の悲しみ」
いつ、誰が書いたのかも分からない日記が発見された

今日が限りなく続く昨日の続きでしかないことに絶望しただけさ
この1年で僕は随分変わったけれど、君のことは分からない
ましてや、そのきっかけなんて
つまりはそういうことなんだ
僕と君は交わることのない他人のままだった
もしかしたら
2人別々のことをしながら別々のことを考えながら
同じ気もちでいるのが一番幸せなのかもしれない
なんて思ったりもするんだ

綺麗な字を書ける人が羨ましかった
上手に絵を描ける人が羨ましかった
君の手を握れる人になりたかった
君の隣で笑っていたかった
「君」ばかりだ、考えてるの

「春。」
と書いた時のマルのような
誰もいないのに擦り減った靴のような
君が好き、と言える程度の気もちなんて
きっと僕の愛は傾いているんだ
現実よりも30cm上空の夢を
浮遊する現実を
それよりも
君の手を握りたいのに

ずっと誰かの隣にいたかった
ずっと誰かの待っている家に帰りたかった
ずっと待っている「誰か」が欲しかった
ずっとずっと待っていた誰かを追い掛けて追い駆けて追い越した
そうしてまた手に入らなかったんだ

好きという気もちひとつ、飲み込んで
君にあげるはずの未来を探している、いま
君にあげるはずの未来を探しています




(choriさんの「未来」「ダンサー イン ザ アフターダーク」、
みかとやすさんの「惑星とスープ」に影響を受けています)

2.07.2013

ここのつきピース

朝、出掛けようとしたら靴紐が絡まって嫌になったんだ。駅に着いたら目の前で扉が閉まったんだ。並んでいたのに割り込まれたんだ。最後の席が埋まって、折角用意した傘を電車に忘れて、改札から出たら本降りになったんだ。コンビニでは小銭が1円足りなくて、買った豚まんはぬるくて、口笛吹きながら歩いてきたおじさんの煙草でマフラーに穴が開いて、蛍光灯が切れかかっていて、お気に入りのマグカップにはひびが入ってて、コーヒーが書類を駄目にしたんだ。嫌になった。嫌だった。こんな日嫌いだった。嫌いになった。こんな世界。こんな中にも、そこから外れたどこかに幸せのある世界が嫌だった。不幸に浸らせてくれないこの世界が嫌いだった。嫌いだった。嫌い。嫌い。嫌い。なのに、

レジを打って巻いたぜんまいの音が、
風が吹き抜けた銀杏通りが、
排気ガスに顔を顰めた猫が、

過ぎ行く街が9月になる
過ぎ往く人が9月になる
大好きだった夏が掻き消されて流されて9月になる
9月になる
9月になる
9月になる世界が僕を蹴っ飛ばしたんだ
(ピース)
全ての死んで往った偉人達にピースを
全ての名も無きミュージシャンたちにピースを
全ての日常を回している人たちにピースを
全ての非日常に翻弄されている人たちにピースを
全ての不幸に為り切れない幸福な人たちにピースを

ピースを!ピースを!!ピースを!!!

1.15.2013

夜の魚

色々なことを忘れたくて夜の街に泳ぎ出す

酒飲みは自分が酒飲みであることを忘れたくて酒を飲むのだと

言ったのは誰だっけ

忘れられなかった色々なこと

悲しい思い

泣き出したい気持ち

思い出

感情

だけは消えずに

いまも

リバーブする

解法を望んではいない/いけなかった

置いてきた色々なこと

明日が来なければ良い

忘れられなかった色々なこと

悲しみ

がリバーブする

夜の街を泳いでいる

何処へも行けなくって嬉しい

訳がない

何処へでも行けるのに

行く場所が無くって悲しい

淋しさ

がカウンターに置いてきぼりにされていて

悲しい

気持ちだけ



リバーブする

いま

忘れられなかった色々なこと

だけ



悲しい

リバーブする

夜の街に泳ぎ出す

いま

誰からも傷をつけられなくって悲しい

訳ない

感情

だけが

淋しい

夜景がきらきらと

夜の星

の涙



魚眼レンズの向こう

予定が外れて

カウンターに置いてきぼりになってる

いま



淋しさとダンスする

夜の街

誰からも忘れ去られなくて悲しい

悲しい



言えなくて

淋しさ



リバーブする

置いてきぼりになった

カウンターに

色々な忘れられなかったこと

リバーブする

リバーブする

リバーブする

感情

だけ



夜の街に泳ぎ出した