少年がいる
厚紙で作った飛行機を追い掛けた少年が
金色の叢の中に立ち尽くしている
演劇の幕を読むような描写を含めた詩を
現実と空想と回顧と虚構の入り雑じった不条理演劇のような詩を読もうと思う
前回の復習をします
演出が声を上げる
燃えた家は何度だって復元される
被害者は何度だって甦る
だってそれがお芝居だから
幕が降りたら、そこは……
野に白い花が咲いている
上手から入ってきた狩人は獲物を探して空を見上げる
少年が下手からその様子を窺っている
金色の叢の中で家が燃えている
金色と朱色の炎を上げて燃えている
火はすぐに草原に移り、少年は駆け出した
夢はいつだって良いとこどり
同じシーンの繰り返し
僕は勇者
森の獣や鳥たちを狩人から救った勇者
なのに涙が止まらないのは何故だろう
僕は勇者
みんなを魔の手から救った勇者
なのに誰もいないのは何故だろう
こんなに寂しいのは何故だろう
テレビが燃えている
ナトリウムの黄色やカルシウムの橙色が燃えている
箱の中にいるのは誰
幕に囚われたのは誰
僕は勇者
みんなを救った勇者
なのに救われなかったのは誰
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