一緒に住んでいると云うのは役得だな、と思うことがたまにある。
彼女は忙しい人で、大抵僕より帰って来るのが遅い。
そして帰って来た時のドアを開ける音でその時の気分が分かるほど分かり易い。というか隠さない。
不機嫌な時や疲れきっている時は分かりにくい声でただいまと呟いたまま何も言わずに寝てしまうが、機嫌の良い時、というより興奮している時は上気した顔で話しかけて来て訊いてもいないのにべらべらとその日あった事を喋りまくる。恐らく黙って聞いてくれるなら相手は誰であっても良いのだと思う。じっと聞いていると嬉しいのか幸せそうに笑いながら話す。
一頻り話して満足するともう十分だと云うように口をつぐんで自分のことを始める。なおも見つめていると曖昧に笑いかけて話題を探そうとする。そうして煩わしそうに眉を顰める。
自分勝手なこと甚だしいと思うのだが僕は幸せそうに笑う彼女の顔を見ているのが好きなので、特に何も言わない。
忙しくしていればいいと思う。悲しみなんて感じないほどに。
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