道路沿いに赤紫色のアザミがぽんぽんと玩具の花の様にずっと咲き続けていた。
その間を大きな黒い蝶が独りで彷徨っている。
この先はどうなっているのか気になる道があった。
何キロも何キロも一人で山の中の道を歩いていたら、町に出た時その町並みが人の多さが触れ合いが嬉しくなるだろう。
とてもとても楽しいだろう。
でもきっとまた山の中へ続く道を歩きたくなる。
鍬で掘り返した雑草の根を集めながら、こうやって僕の人生は終わっていくのかと思った。
スリリングな出来事も無く昨日も今日も明日も緩やかに動いて行く世界の中で終わらない仕事をし続ける。
これなら都会に居た方が刺激的だった。
毎日イベントがあって予定帳は埋まって食べ物は買って手に入れる物だった。
もしかしたら終わりはどちらも目に見えず匂いもしない放射線で数十年後に与えられるのかもしれない。
同じ鍬で田んぼの畦を作っていたら無心になった。
心が澄めば目も良く見える。遠くの山まで緑だった。
田に入ってくる水は冷たかった。
水には化学物質の匂いがうつっていた。